2013年8月2日金曜日

アジアの“記憶”を“記録”した写真展:『米田知子 暗なきところで逢えれば』東京都写真美術館

◆アジアの“記録”をテーマに

「写真のエステ」展の事を先に書いてしまいましたが、本当は
こちら目当てで写真美術館に行きました。

米田知子
暗なきところで逢えれば

日本を代表する写真家の一人である米田知子の個展を開催します。米田の作品は“記録”という写真の根本的な役割をベースにしながら、現実に見えているものだけではなく、そこにある記憶や歴史を背景に投影しています。初展示となる「サハリン島」や映像作品、そして近年の代表作より、日本やアジアの近代化における記憶や歴史をテーマに構成しました。いま存在する風景や建物に、過去にどのような出来事が起こったのか。写真を見る側はその事実を知った途端に、見えているイメージが別のものに見えてくる錯覚を覚えます。米田の作品は写真というメディアの持つ特質を最大限に生かしながら、鑑賞する側に見えているものの本質を、あらためて問いかけています。
http://syabi.com/contents/exhibition/index-1864.html

◆考えさせられる写真

米田さんの写真、それまでそんなに知っていたわけでは無かったのですが、
展覧会紹介に載っていた作品のイメージが気に行ったので、展示を観に行きました。

ですので、歴史的な出来事をコンセプトにしているという事を知って、少し驚きました。

第二次大戦のサイパン島、いわゆる「バンザイクリフ」に連なる道を撮影した作品や、
ロシアの流刑地である「サハリン島」の写真等、
その背景にある意味を知って写真を観ると、「重み」を感じます。

基本的には風景写真なのですが、場所が持つ力なのか、
私が今まで見てきた風景写真とは違うオーラがあります。

かと言って、もろに「戦争の悲惨さ」を訴えかける
ドキュメンタリータッチな写真という様には
全く見えず、米田さんのフィルターを通すことで、ニュートラルな写真になっています。
そのため、自分のペースでテーマを感じ取る事が出来ました。

二重生活を送るスパイの生活のイメージを、
古いカメラを使って撮影した「パラレル・ライフ」というシリーズは、
技法としてとても面白いと感じました。

◆展示カタログも素晴らしい

展示だけでなく、図録もとても素敵だったので購入しました。
写真集の装幀を多く手がけるアートディレクター、近藤一弥さんによるブックデザイン。

最近の展覧会の図録には珍しく、ハードカバーのしっかりした装幀です。
写真の印刷も奇麗で、デザインも展示のイメージに合った静謐さがあり、
とても気に入りました。

◆終戦記念と絡めて

8月15日は終戦記念日という事もあり、太平洋戦争に関する知識を深めてから
この展示を観に行くと、より深みが増しそうです。

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