2013年7月16日火曜日

人と道具が共生する世界:「榮久庵憲司とGKの世界 鳳が翔く」展/世田谷美術館

日曜日に観に行きました。

デザインが導く未来
榮久庵憲司と、彼が率いる創造集団GKは、戦後の復興期より、数々の製品をデザインすることで、日本人の生活や都市空間の近代化の一翼を担ってきました。その領域は、日ごろ街中で目にする日用品やオートバイから、博覧会場の施設やサイン類、都市のインフラストラクチャーまでと、多岐にわたります。
 榮久庵は、実家を継ぐべく僧門に入ったのち、デザインの道を志しました。その原点には、原爆で廃墟となった広島の街の光景と、進駐軍が体現していたアメリカ文化があったといいます。そして東京藝術大学在学中より、ともにデザインを学ぶ同窓生と、「ものの民主化、美の民主化」をスローガンに、当時の日本としては類のない、インダストリアルデザインを専門とするグループ、GKを結成しました。
以降、60年にわたるデザイン活動の根底に流れているのは、モダンデザインと東洋の思想の融合に加え、人が作ってきたもの=道具についての長年の研究です。人類が太古に初めて手にした道具から、未来の暮らしまでを見据えて、人と道具のあるべき関係をデザインによって提案し続けてきました。
 本展覧会では、製品化されたものやその模型、将来へのプロポーザル、さらに人と自然と道具が美しく共生する世界を具現化したインスタレーション等によって、榮久庵憲司とGKが展開してきた、デザインの世界像をご紹介します。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

◎良かった点

・展示の魅せ方がカッコいい
さすがのGKグラフィックスという感じです。
エントランスから会場に入るまでの序文の魅せ方がまず、とても格好よかったです。
「のれん」風に透明感のある布に、榮久庵氏の言葉を印字して、
それを何枚も下げて、まるで「ことばのオーロラ」のような雰囲気でした。

また、「しょうゆ瓶」や「V-MAX」など、
プロダクトの展示の仕方もとても格好よかったです。

会場内のサイン計画の矢印まで、しっかりとデザインされている感じがしました。

・LED装置
歩くと足下が光るLEDの装置があり、神秘的で楽しめました。

・創造工房
創造工房という、コンセプトモデルやGKのデザイナーさんの
仕事とは少し離れた研究を展示するコーナーがありました。
災害時に活躍するバイクや、ユニット型の医療ルームなど、社会に貢献できるデザインの提案があり、興味を持ってみる事が出来ました。

▲イマイチだった点

・後半、宗教っぽさが…
後半に入るにつれて、宗教色が強くなっていくのが、なんというか
個人的には苦手でした。
良く読むと、「道具と人が共に生きる理想のあり方」を模索していた、
いう事は分かるのですが、〈道具千手観音像〉や〈池中蓮華〉というのを
大々的に見せられると、ちょっと微妙な気持ちになりました。

私自信、仏教のモチーフは好きなので、曼荼羅や仏像を見たり、
その背景の物語を読むのは好きなのですが、それをLEDやブルーライトを使って
表現してしまうとなんというか新興宗教的な安っぽい感じが出てしまうと思います。
そういった意味で、コンセプチュアルなテーマを扱う場合、
もう少し繊細な表現をして欲しかった気がします。

満足度:★★★★

全体的には、内容も、見せ方もクオリティが高くて満足しました。

世田谷美術館はバスを使わないと行けないので少し不便ですが、
砧公園は広くてとても気持ちいいので
展示を見終わってもゆっくりとした一日を過ごせます。


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